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引退表明までサプライズ(驚き)で締め括(くく)るとは、いかにも小泉純一郎元首相らしい引き際だった。「小泉引退」は、与野党を問わず、政界に大きな衝撃を与えた。ことに平成17年の郵政選挙で、小泉人気を追い風として当選した「小泉チルドレン」らへの影響は必至だが、政界の世代交代を促進し、日本の政治潮流を変えるきっかけになりうる決断としては評価したい。

 小泉氏は首相在任時の平成15年10月、産経新聞とのインタビューで「私自身は、(引退は)65歳をめどにしている。その後はゆっくりとさせてほしい」と語っている。政治的思惑は当然あるだろうが、66歳になった小泉氏にとっては、かねての計画を実行に移しただけともいえる。

 自民党出身の首相経験者が古希(70歳)を前に自らの意志で引退生活に入るのは、小泉氏が昭和30年の結党以来初めてのケースになる。多くの首相OBは、退任後も衆院に長らく議席を占め、岸信介、田中角栄両氏らは隠然たる影響力を保持し続けた。現在も6人(小泉氏を含む)の首相OBが現役の衆院議員を務めている。

 議院内閣制の先輩である英国では、事情は異なる。ブレア前首相は、首相退陣と同時に議員も辞め、サッチャー元首相も退任2年後に下院議員を引退している。

 英国での政権の寿命の長さに比べ、日本では、過去20年間の政権の平均寿命は1年半にも満たない。これでは、首相を務めても完全燃焼できず、身体の許す限り議員活動を続けたくなるのだろう。日本には年長者の経験や知恵を大事にしようという空気も強い。

 しかし、そうした傾向が政界の新陳代謝を遅らせ、長老議員による談合によって重要な決定がなされがちな日本的政治風土の素地となっている。こうした中、小泉氏が、政治的影響力を持つ「首相OB」議員の座を自ら放棄した意味は決して小さくない。

 国会議員の定年制導入は難しい課題だ。しかし、一人一人の国会議員が小泉氏の決断を良き先例として参考にすることは可能だ。

 ただ、残念だったのは、小泉氏が自らの後継者に次男を指名したことだ。「古い自民党をぶっ壊す」という言葉がウソでないならば、息子に選挙地盤を譲る世襲を断ち切り、別の選挙区で出馬させるのがスジだ。画竜点睛(がりょうてんせい)を欠く、とはまさにこのことである。


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